昔の話だ。
僕が小学生の頃、初代遊戯王アニメが絶賛学校で流行っており毎日の楽しみは遊戯王であった。
そのアニメで梶木漁太というキャラクターが登場し、今まで見向きもされなかった水属性に注目が集まり皆が水属性ツエーとなった頃に友人宅でデュエルをすることに。
学校から帰宅し徒歩3分の友人宅へ向かう。
友人宅は中華料理屋さんを営んでいる在日中国人の家庭でチャーハンをよくつくってもらっていた。
チャイムを押すと元気よく
「おー不自由やん!まぁ入れよ。待ってるで!」
と友人の母が出迎えてくれた。
彼女はあまり日本語が上手くなかったが友達みたいなテンションで来るから面白い人だった。
「お邪魔しまーす」
家にお邪魔し、友人の部屋へ入ると彼はもうデッキをテーブルに置き臨戦態勢に入っていた、何故か手札もしっかり5枚配置されていた。
そして、彼の背中から青いビニールシートが覗き見えた。これが今回のポイントだ。
「手札仕組んでるやろ」
「そんなわけw」
もう手札は仕組まれている。
僕の方もデッキを組みながら手に入れておきたいカードを一番下にセットし徐々に上げていくシャッフルで仕組みを終える。
この時手札に引き込みたいカードはサンダーボルトと死者蘇生であった。
自然な素振りでシャッフルを終え手札を5枚ドロー。策略は見事に成功。
この当時「先攻後攻を決めてから手札を見る」というやり方ではなかったので手札を確認し先攻後攻を決めるジャンケンをした。
結果、僕がジャンケンに勝利するも「頼むから先くれ」と駄々をコネだす友人に「チャーハン」と一言。
取引は成立、いざ決闘の始まり。
彼は早速梶木漁太よろしく話題のフィールド魔法カード「海」を発動。
ここまではよかった。
問題は得意気な顔をしたまま彼の背中から見えていたブルーシートをテーブルに乗せて
「これで俺の水属性モンスターは攻撃力アップして、攻撃されへん!」
訳がわからない人もいるだろう。
だが、遊戯王アニメを欠かさず見ていた僕はピンと来た。
「フィッシャーマン戦法かッッ!!」
そうアニメで梶木漁太が使うコンボに海を発動し伝説のフィッシャーマンを召喚。
これで相手は攻撃できないというロックを作り出したのだ。
だが、本来フィッシャーマンでなければならないはずが何故か拡大解釈で水属性まで広がってしまっていた。
「モンスター召喚!」
そういってビニールシートの下にカードを置いた。
何を召喚したのか?また守備なのか攻撃なのかの表示形式すら分からない。
ビニールシートをめくろうとすると
「ルール違反やぞ!」と怒り始めた。
もはや何がルールなのか、ルールとはなんなのか?ビニールシートは違反ではないのだろうか?そんなことを考えた末に簡単な答えを見つけ出した。
手札に握られたサンダーボルトで解決なのだ。
なーに、水属性だろ?雷に弱いんだ、全滅だ。とポケモンの相性を持ち出し勝利すれば良い。
ルールとは強いものが作る。否、強いものだけがルールを作ることができるのだ。
こちらの手札に存在する全体除去で一掃させてもらおう。
「そしてカードを伏せてターンエンド!」
意気揚々としていられるのもそこまでだ。
「俺のターンドロー!!!」
闇遊戯顔負けの迫力で相手を威嚇しつつドロー。
「お前の負けや、サンダーボルト」
今にして思えばブリーチの市丸ギンのようなセリフである。
射殺せ、神槍 みたいな
自分の勝ちを確信し友人の顔を見てみるとニヤついている、明らかに伏せたカードが何かを発動させるつもりだ。
「カウンター罠発動、神の宣告」
サンダーボルトは防がれた。
彼のフィールドはブルーシートのお陰で真っ青で墓地もデッキも確認できないし、何なら神の宣告すら確認できないがカウンター罠に抵抗する手段を持たない僕はかなり劣勢である。
でも、まあとにかく相手のライフを削り切ればオーケーなので僕は手札から最強の切り札ブルーアイズホワイトドラゴンを召喚した(当時アドバンス召喚(生贄召喚)の概念が無くそのまま召喚ができた)
「はい死亡、水属性モンスター以外は召喚できないのでブルーアイズと言えども破壊ですー」
「黙れカスがドラゴンやぞ、飛べるに決まっとるやろうが」
もはや子供の喧嘩である、というか子供なので仕方ない。
「一回そのシートどけろや、ほんまに神の宣告なんか!?」
という問答の末彼のブルーシートをめくると、まったく関係の無いカードが墓地らしき場所に存在し、モンスターに関しては密林の黒竜王で地属性なのでどこにどう「海」の恩恵を受けられたのか。
しばらくの沈黙のあと
友人「チャーハン頼んでくるわ」
僕「肉多目な」
チャーハンは旨かった。
遊戯王デュエルモンスターズは非常に面白いアニメであった。
多種多様なカードが混在し主人公は二重人格であり声優は極限までに下手だったがデザインが素晴らしく男の子の琴線に触れる傑作だと断言できる。
だが、時々俺ルールが多く、わからなさ過ぎたのでこういった事件があった。
昔の話だ。